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海鳥海岸漂着調査Beached Bird Survey講習会
 
 

 
 
 
2005年6月16日(木)
石狩市いしかり浜「番屋の宿」および前浜にて

講師
R.G.フォードコンサルティング社長/上級研究員 グレン・フォード氏

 私はグレン・フォードといいます。海鳥に関する生物学者です。私は何年にもわたり海鳥海岸漂着調査に携わっています。
今回このような機会を与えられたことをうれしく思います。
 私が大学院生の頃、アラスカのベーリング海で大きな油田が発見されました。しかしこの地域には多くの海鳥が生息してい
て、重大な心配ごとになっていました。もしこの地域で大規模な油流出事故がおこった場合には、広範囲にわたる重大な影響
が海鳥に対して起こるだろうと思われたからです。そこで私は、このようなことを起こさないためにはどのようなことができ
るのかを考えはじめました。
 
 現在ではベーリング海での採掘は行われておりませんが、これをきっかけとして、私は自然資源の損害調査にかかわってき
ました。実際にエクソン・バルディーズ号や昨年のセルダー・アユ号の事故においては、その手法を用いて評価を行いまし
た。この損害評価では、実際に被害を受けた鳥の数がどのくらいになるかを見積もることを行います。ビーチサーベイのデー
タは、鳥の死亡率を推定するにあたって最も重要なデータとなります。
そこではこれから、ビーチサーベイのやり方についてお話します。説明の後には、実際に海岸に出て、皆さんにもこの調査を
やっていただくことになりますので、途中でわからないことがありましたらどんどん質問してください。
 
 この調査をやる理由としては、ふたつのことが挙げられます。まずひとつは、油の流出によってもたらされた鳥の死亡が、
どの程度であるかを推測するためのものです。もうひとつは、油流出がない時期においても鳥の個体群の健康状態がどのよう
であるかを観察する点にあります。アメリカでは何ヵ所か、年間を通してモニタリングをしている場所があります。調査者は
コースティスト、ビーチウォッチ、ビーチコーマー、シーメンなどと呼ばれています。これらのプログラムは、生物学者によ
って計画されますが、実際に調査を行なうのは訓練されたボランティアです。このボランティアの人たちは、たいへん良くや
ってくださいます。こうした訓練を受けたボランティアたちが、油流出事故があったときにも対策を立てる際に手伝ってくれ
ますし、他の方々への訓練も行なってくれます。
覚えておいてほしいのは、この漂着鳥調査では、全ての鳥を数えると言うことにはならないという点です。漂着した鳥の中に
は、腐肉食の動物によって食べられてしまうものもあります。もちろん調査員が見逃してしまう場合もあるでしょう。今週末
には札幌の会議で、このような点について詳しくお話いたします。
 
 ですから漂着鳥調査は、全体でどのくらいの数の鳥が死んだかという推測を出すための指標となるものであります。直接そ
の数を使うというものではありません。しかし適切なデータをこの調査で収集することによって、実際にどれくらいの鳥が死
んだかという正しい推測をすることが可能になります。ここまで何かご質問はないですか?
 
 次に、どのようにこの漂着鳥調査を行なうかということについて説明します。正確な調査を行なうためには、計画の最初の
段階から適切なものでなければなりません。あらかじめ計画された典型的な海岸の部分を使うべきです。そしてその部分を調
査するときは、毎回全く同じ方法で調査が行なわなければなりません。対象とするビーチは、2~3時間で歩いて調査を終了で
きる程度の広さのものでなければなりません。つまり1キロから4キロくらいの長さになるでしょう。スタート地点と終了の地
点が決められなければなりません。そしてその部分に関しては、浜の構造(地形)が一定(均質)でなければなりません。
 
 調査の頻度については、どういった目的で調査を行なうかによって違ってきます。目的が、シーズンごとやあるいは数年に
わたる傾向を知るためであれば、月に一回ぐらいの調査になるでしょう。もし単なる指標のためにではなく、それによって死
亡した鳥の数を正確に把握したいということであれば、一日あるいは二日おきに調査を行なう必要があります。もしその目的
が実際に油流出の影響を調べるためのものであれば、一日に1回または2回の調査を、それぞれの海岸で行なう必要がありま
す。
 
 目的がどのようなものであるにせよ、集められるデータの種類は同じようなものになります。違いがあるとすれば、発見し
た鳥を回収して持ち帰るかあるいはそのままにしておくかということがあります。油汚染事故の時には通常、発見された鳥は
回収され、冷凍保存されます。これは、腐肉食動物に食べられないようにするためであり、後に証拠として必要になることが
あるからです。海岸のモニタリング調査として行なう場合には、発見した死亡鳥は、印をしてそのままそこに残しておくのが
通常です。ただ、死んで日数があまりたっていないものは、持ち帰って解剖することもあります。このように、発見した鳥を
そのまま海岸に残しておくことによって、他の情報も得ることができます。たとえば腐肉食動物によって食べられるまでに何
日くらいかかるか、とかいった情報です。今日行なう調査では、鳥は回収してください。油流出事故のときのように回収した
いと思います。何かご質問は?
 
 
【質問】調査頻度について、油流出事故の場合には当初は1日に1回または2回の調査を続けるということですが、どのくらい
続けた後通常のペースに戻すのでしょうか。
 
【グレン】先ほどは1日に1回または2回の調査と言いましたが、これは理想的な頻度で、通常はなかなかここまではできない
と思います。そういう場合には2~3日に一回でも結構です。2週間くらい経ちますと漂着する鳥の数も減ってきますので、週
に2~3回といった頻度に減らしてもいいと思います。頻繁に行なわなければならないのは、流出後の数日間ということです。

 この調査は、必ず引き潮のときに行なわなければなりません。まず担当区のスタート地点に行きます。そこで、記録用紙の
最初の部分に記入します。次に波打ち際に沿って歩きながら鳥を探して行きます。漂着したばかりの鳥がある場合には、波打
ち際の砂の濡れた部分にいるはずです。もし鳥を発見したらその場に立ち止まり、自分の立っている場所から鳥の位置までの
距離を見積もります。そして用紙に記入します。その後鳥のところまで歩いていって、鳥に関する情報を記録します。写真を
とります。もし鳥を回収するのであれば、大きな鳥は大きな紙袋に、小さな鳥は小さな紙袋に入れます。時には、残っている
のは骨や羽だけという場合もあります。そのときもそれを袋に入れます。もし油事故の場合で鳥を回収するのであれば、油の
ついた鳥は紙の袋かアルミホイルで包んで回収してください。そしてそれを冷凍保存することになります。ビニールの袋は使
わないでください。ビニールはプラスチックの成分が油と反応して、油の成分が変わってしまうことがありますので。
 ひとつの袋には一羽しか入れないでください。2羽以上入れると、別の鳥にも油がついてしまいます。アルミホイルを使っ
てもいいのですが、いったん冷凍するとホイルをはがすのが大変困難になります。紙の袋には、外からわかるように鳥の番号
を書いてください。冷凍庫の中でも鳥の番号がわかるようにするためです。
 
 もし回収しないでそのまま鳥の死体を海岸に残していく場合には、目印となる札やタグを残してください。次に来たときに
鳥がどうなっているかわかるようにしておくためです。印をつける方法はいろいろありますが、例えば色とりどりの紐をつけ
る方法や、プラスチックのバンドをつける方法もあります。一番簡単なやり方は、脚の先の一部分を切りとるというやり方で
す。もう死んでいますから、痛くはないのです。
 
 ここまでの作業が済みましたら、また歩き始めます。そして自分の担当部分の終点まで行きます。終了地点まできたら、ま
た調査用紙の終わりの時間、終わった場所というところに記入します。時には時間が足りなくて、終点まで到達できないこと
もあるかもしれません。その時も自分がどこで調査を終えたのかが、はっきりわかるように記録してください。そしてまたも
との地点まで引き返します。今度は波打ち際ではなく、高い場所を歩いて戻ってきてください。そして海岸の高いところで鳥
が見つかるとすれば、それは打ち上げられた後長い時間が経って、ミイラ化した鳥の場合が多いです。スタート地点まで戻っ
てきたら、また記録用紙に記入します。これから記録用紙の細部を説明しますが、ここまででご質問は?
 
 
【質問】時化の後に調査すると鳥の死体は少ないように思ったのですが、時化の後には調査をしない方がいいのでしょうか?
【グレン】おっしゃるとおりだと思います。前の晩が時化だったりしますと、海岸は全部波で洗われてさらわれてしまいます
ので、何も残っていない状態になると思います。ですから前日の天候も考慮しなければなりません。先ほど言ったミイラ化し
た鳥というのは、場合によっては何ヶ月も高いところにそのまま残っているのですけれども、それでも時化があると流されて
しまいます。
 
 
【質問】最初に鳥を発見したときに距離を測るのは、どういう意味があるのですか?
【グレン】調査者がどれだけ鳥を見つける能力があるかという、調査者の有効性を見る指標になるからです。ライントランセ
クト分析という方法ですが、当然自分に近い鳥は見つけやすいですが、離れるにしたがって発見できない確率が高くなりま
す。必ず記録しなければならないものではありませんが、データを後で分析する際に、この記録もあると役に立ちます。
 
 
【質問】死亡個体がどのように消失するかについて教えてください。
【グレン】例えば一日おきや二日おきに調査すると、どれくらい時間が経つと死体がカモメなどに持ち去られてしまうかがわ
かってきます。あるいは鳥に重石か何かをつけて、毎日どうなったか調べることもできます。この点については後でまたご説
明します。

 まず最初に記入するものですが、日付、自分の担当する海岸の部分の名前です。この地図にはこの海岸が3つの担当区に分
かれています。この人が担当することになったのは「グリーン公園区域」だったわけですね。次に天候を記録します。そして
開始時間。もしGPSがあれば数字を記入します。なければその地点の説明を言葉で書きます。そして自分の名前と所属団体、
連絡先を書きます。電話番号なども書いてください。後で何か質問が出たときに連絡がつくようにしてください。アメリカで
は場合によっては四輪駆動車や全地形万能車などを使って調査することもあります。ここには徒歩だったのか、そういう車だ
ったのかということを記入します。調査は通常引き潮の時に行なわれますが、場合によっては上げ潮のときに行われるかもし
れませんので、潮の状態を記録します。
 
 鳥を発見したら、まず自分の立っているところから鳥までの距離を目測します。札の番号を書きます。鳥一羽に対して別々
のひとつの番号が割り振られます。それぞれの鳥に違った番号が割り振られるように、調査を計画するときに番号の割り振り
を考えなければなりません。特に鳥をそのまま海岸に残しておくのであれば、より鳥の種類を正確に記録しておく必要があり
ます。例えばボランティアなど鳥にあまり詳しくない人が調査をする場合には、鳥の種類がよくわからないかもしれません。
これはワシントン州で作られた、鳥の死骸を発見したときに種を識別するためのガイドブックですが、残念ながら日本でよく
見られる種とは違います。こういった漂着鳥調査を計画する際には、発見した鳥について、調査に参加してくれるボランティ
アの方が、細かい段階までわからないまでも大まかなグループまで大体の種類がわかるような説明やガイドブックを作ること
が必要かもしれません。
 
 発見した鳥には、油がついているかもしれません。油流出事故がなくても、鳥に油がついていることはあります。鳥の体の
何パーセントの部分に油がついているかを見積もります。そしてタグを鳥につけ、タグが見えるようにして写真を撮ります。
また鳥の大きさがわかるように、何か目安となるものやスケールを横において写真を撮るとなお良いと思います。写真の番号
を記録しておきます。後で写真番号と鳥の番号が結び付けられるようにするためです。
 
 漂着してからどれくらい時間が経っているかを推定するのも大切です。漂着後の時間経過を見積もるひとつの方法として
は、足を触ってみます。足が柔軟に曲がる状態ですと、漂着してからまだ日が浅いことになります。脚がもう硬直している、
あるいは腐っている場合は、漂着してからずいぶん日数が経っています。もちろんもう食べられてしまって足がない場合には
わかりませんので、不明ということになります。
 
 目を見ることによっても漂着してからの日数が推定できます。目がまだ澄んだ状態ですと、漂着してからまだ数時間しかた
っていないという証拠です。目がくぼんでいる、あるいはなくなってしまっているときには、漂着してから日数が経っていま
す。その鳥が打ち上げられていた場所についても記録します。海岸の高いところであったか、いろいろなものが打ち上げられ
ている線のところ(破壊物線)であるのか、それとももっと海よりの低い波打ち際であるのかです。通常、高い場所にある鳥
はより日数が経っていて、低いところにあるほど時間が経っていないことになります。
 
 次に、どの程度食べられてしまっているかを見ます。残っている体の部分がどこであるかを記入します。さらに鳥の体に何
か巻きついている場合には記録します。たとえば漁網や釣り糸が絡まっているかもしれません。釣り針が刺さっているかもし
れません。アメリカでは、ビールなどが6缶パックで販売されています。そのプラスチックのリングに鳥が首を突っ込んで死
んでしまう場合もあります。
 
 次のページをご覧ください。例がいくつかあります。鳥の例と、どのように記録したかという例です。これには間違いがあ
ります。2番目と3番目の鳥に関しては、標識番号がついていません。さらに写真には、鳥の大きさがわかるように、定規か何
かを置いた方がいいですね。そして残っているからだの部分がどこであるかについては、そこに書いてあるリストの中から挙
げていけばいいわけです。
 
 自分の割り当て区域の最後まで行ったら、必要事項を記入して、戻ってきます。GPSがあればそれに越したことはないです
が、なければそこがどのような場所であるか言葉で記入してください。そしてスタート地点まで戻ってきたら、残りの空欄を
記入します。まず海岸のタイプです。そこに書いてあるようにいろいろなタイプがあります。今日はお分かりのように、たぶ
ん砂浜です。それからは「破壊物破片」と書いてありますが、浜にどれくらいのもが打ち上げられているかも書いてくださ
い。たとえば時化の後でしたら、浜に何も落ちていないかもしれません。もし油が浜にあるようでしたら、その程度を記録し
ます。シームは薄く膜のような状態で光って浜に残っている油です。タールボールというのは硬い、茶色くなった油の塊で
す。浜を歩いていて、足にくっついて取れなくなったりすることがあります。本当に油流出があった場合には、どろどろとし
た油が海岸に漂着します。
 
 記録することは以上ですが、何か質問はありますか?この後実際に海岸に出てやっていただくことになりますが。わからな
い点はありませんか?
 
 
【質問】時間の記録については?
 
【グレン】スタート地点と、スタート地点に戻ってきた時間を記録します。GPSで地点を記録するのは、スタート地点と、区
間の終点のふたつです。それでは、これから海岸に行って鳥を探します。

【海岸でグレン】
 まず、鳥を発見したら、立ち止まって鳥までの距離を目測します。
 次にタグをつけるんですが、ここがB区間ということで、この鳥はB-01ということにします。必要だと思ったら使い捨ての
手袋をしてください。わたしは普段しないんですが。
 
 これは何の鳥だかわかりますか。エトロフウミスズメです。タグ(標識)をつけます。脚につけられれば一番いいです。そ
して写真を撮るときには番号が見えるようにします。使い捨てカメラでもいいです。写真の番号は何番ですか? 鳥の体に油
がついていないかを見ます。何%でしょう。これはゼロです。
 
 脚の状態を見ます。比較的新鮮です。目の状態を見ます。くぼんでますね。場所は、浜の低い位置ですね。網など体にから
まっているものはありません。破壊物線上にあるかどうかも記録します。これは、見逃した鳥もあるかもしれないという情報
になります。発見した時間を記録します。GPSデータはわかりますか。緯度経度を記録します。

 
【質問】はじめに、砂に埋まって翼の先だけ見えていた写真はとらないんでしょうか。
【グレン】一番いいのは、最初そのままの状態で、タグと定規を近くにおいて写真を撮るのがいいですね。
 それじゃ回収します。必ず袋にも番号を書いてください。もし種類もかければ書いてください。一羽の鳥に一枚の袋を使っ
てください。
 そしてここが終了地点だとすると、ここから高い場所を通って最初のスタート地点に戻ります。何か質問はありますか?
 
 
【質問】もし海岸が幅広い場合にはどうやって調査したらいいでしょうか。
 
【グレン】ジグザグに歩くのがいいでしょう。発見する能力がわかっていて、参加した人数や広さと距離に対して費やした時
間などがわかっていれば、もし見落としがあってもある程度補正することができます。

【渡辺】グレンさんに質問です。今日のビーチ調査で、チームとしては何人くらいで組むのがベストでしょうか。
 
【グレン】通常は1グループ2名のことが多いですが、1名でも十分です。2名以上の場合は海岸の幅が広いようなときで、分担
して調査を行います。
 
【渡辺】生きている鳥がいた場合にはどうするのか。
【グレン】死んでいようと生きていようと、漂着している鳥については全て記録します。そして生きている場合には直ちに回
収するのがいいでしょう。しかし例えばシギチドリ類の場合だと、発見しても簡単に捕獲できない場合があって、その場合に
は収容は数をチェックするだけになるかもしれません。
 
【村上】1999年に根室半島でウトウが大量に打ち上げられたことがあり、その後5年、同じ海岸を7~8月を中心に調査してき
ました。その結果、1999年のように100羽以上も衰弱していたり新鮮な死体が上がることはなかったんです。100羽以上海岸に
上がるのは異常であると、結論付けていいものかどうか。
 
【グレン】何年も同じ浜を調査しているとわかると思いますが、その年によって値が変わります。原因として考えられるの
は、ある年が鳥にとって非常に条件が悪い年だった、それからある年には鳥が死んだときにちょうど風が浜に向かって吹いて
くるとかいうこともあります。
 
【村上】そのときにどんな漁業が沿岸で行なわれていたかを照らし合わせることも重要だと思うのですが、日本では漁業者は
なかなか公開しないんです。ちょっとそれが難しい部分です。
 
【グレン】どこでも漁業者の問題はあります。
【村上】5年間のデータで、異常であったと結論付けることができるかどうか。まだデータ不足かどうか。
【グレン】衰弱してやせ細ったような鳥でしたか。
 
【村上】大量に打ち上がったときには、ぼくは調査していなかったんです。次の年は衰弱した鳥はいなかったので、ちょっと
わかりません。
 
【グレン】鳥の栄養状態を見るのはひとつの鍵になります。もし油汚染があった場合などには栄養状態が良いままで打ち上げ
られますけれども、嵐などで餌がとれずに衰弱した場合にはやせこけた状態で打ち上げられます。
 
【黒沢】99年の死体を見たんですが、一見したところ脂肪の蓄積があまり見られなかったので、最初は栄養状態が悪いのかと
思いました。ただ、同じ繁殖期のバンディング調査時のウトウの体重データと比べるとほとんど差がなかったので、栄養状態
の低下はないと考えました。で、多数を解剖したわけではないんですが、首の周りとか背中に病変が見られたので、漁網によ
るものと私たちは判断しました。
 私からも質問したいのですが、最初にビーチ・サーベイは油の被害にあった鳥を調べるということでしたが、鳥の死体がた
くさん打ち上げられるケースというのはいろんな可能性があると思いますが、具体的にはどんな原因があるのでしょうか。
 
【グレン】原因ですが、なかなかそれを結論付けるのは難しいこともあります。鳥は冬の時期に衰弱して死ぬことが多いと思
われます。寒さや飢えで弱った状態になりますと、例えば普段は問題にならないような寄生虫で死ぬこともあります。解剖を
行なっても死因がわからないこともあります。ですから冬の場合は、自然衰弱死というふうに考えることが多いです。もちろ
ん他のわからない原因もあります。どこであっても5年に1回やあるいは10年に一回くらい大量の死体が打ち上げられること
は、決して珍しいことではありません。しかし首に傷が見られたということであれば、やはりそれは漁具による被害であると
思います。
 
【黒沢】続けてグレンさんにですが、ビーチ・サーベイでは打ち上げられた死体の数から実際の被害数を推定するということ
ですが、その方法はどのように行ない、かなり確実な数が出るのかどうか伺いたい。
 
【グレン】あさって札幌でまた詳しくお話しますが、基本的には被害を受けた鳥の中には沈んでしまうもの、ほかの動物に食
べられてしまうもの、あるいは調査者が見逃してしまうものもあります。他の動物に持ち去られるまでの時間(何時間、何日
間かかる)や、海に沈むまでの時間といったものを調べます。また調査者によって何%見逃されるかというデータも取りま
す。それらを使って算出します。
 
【濱田】なぜ海岸を見ていらっしゃる方のデータが大切かということですが、事故が起こる前にも鳥がやってきているのか、
もしくは事故が起こったからやってきたのかを区別するために、普段はどうなのかという情報が貴重なのです。そういった情
報を、私たちがやっている情報図にもまとめさせていただいて、普段はどうなのかということを把握しておけば、事故によっ
てどれだけ悪化したかということが言えるわけです。海岸を普段から見ておくということが、何かあったときにベースライン
として使える貴重なものであると考えていただきたいと思います。
 
【渡辺】石狩浜だけではなくて、北海道全域で見ていく人を作るというのが大切だと思います。今回参加してくれた方々が、
他の人々にも伝えていくということが重要だと思いますので、今日学んだことをしっかりと伝えていってください。今日はど
うもありがとうございました。


※この講習会は、IFAWの支援ならびに平成17年度の地球環境基金助成金を受けて開催されました。